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高専ロボコン2022全国大会 レポート

今年35年目を迎えた「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)」。全国の高専学生が自ら製作したロボットで技術と成果を競う、“高専生の甲子園”ともいわれる、伝統ある競技大会です。
リンクスは、今回初めて高専ロボコンに特別協力、未来のものづくりを担う高専生を応援しています。

2022年11月27日、全国大会が開催され、地区予選を勝ち抜いた25チームが両国国技館に集結。頂点を目指す熱い戦いを繰り広げました。

ロボットで紙飛行機を操るという高難度ミッション

今回の競技のテーマは「ミラクル☆フライ 〜空へ舞いあがれ〜」。自作の紙飛行機をロボットで飛ばし、狭い円形スポットや筒型ブースなどのオブジェクトに乗せる技術を競います。
競技は対戦方式で、より多く得点を取るか、もしくは全種類のオブジェクトに紙飛行機を乗せ「Vゴール」を決めた瞬間、勝ちとなります。紙飛行機を飛ばして相手チームを妨害することも可能。
高専ロボコン史上、最高難度といわれるミッションに、25チームがアイデアと技術を駆使して挑みます。

紙飛行機の形状、飛ばし方もそれぞれ独創的

マシンガンのような大量連射方式や、一機ずつ丁寧に射出するタイプ、遠心力で打ち出すものや、複数の機構から多方向に射出するものなど、紙飛行機の飛ばし方は多種多様。また、使用する紙飛行機の折り方やかたちにも、それぞれこだわりがあり、なかには154種類も紙飛行機を作って試し、理想の形状を追求したというチームも。

射出される紙飛行機の軌道も個性的です。矢のように直線的なもの、なめらかな曲線を描くもの、上からふわりと着地させるものなど、一つとして同じ景色はありません。

印象的だったのは、旭川高専のプロジェクト「吹雪」。キャッシュガン方式の5つの射出機構からピンク色の紙飛行機が大量に打ち出される様は、桜吹雪のように美しく、会場から大きな歓声が上がりました。

大量得点か、Vゴールか。戦略が勝敗を分ける

紙飛行機を多く着地させて点数を稼ぐか、先に「Vゴール」を決めるか。あるいはその両方を狙っていくか。今回の競技で勝つためには、ロボットの精度や技術はもちろん、戦い方が重要なポイントになります。
注目を集めたのは、和歌山高専。筒型ゾーン一点に絞って正確に連射する作戦で、最高276点という大量得点を叩き出しました。
一方、奈良高専はVゴール狙いに徹した戦略で、圧倒的な力を見せつけます。なんと2回戦では、開始24秒でVゴールを決め、会場を一気に沸かせました。

会場を盛り上げる個性豊かなロボットたち

大会では、ロボットの個性的なデザインや斬新な装飾も見どころです。
小山高専は、犬の装飾がコミカルなドラム缶ロボット。都城高専のロボットは、カバの口から紙飛行機を発射する仕掛けで、観客の笑顔を誘います。
LEDを用いて、夜の空港を表現した有明高専ロボットは、滑走路からゆっくり飛び立っていくような射出の美しさも印象的です。エキシビションでは、地域色を取り入れた沖縄高専のシーサー型や、端正な折り鶴型のロボットが登場。
勝負に勝つことだけでなく、見ている人にも楽しんでもらいたい。そんな高専生たちの思いが伝わってきます。

激戦を制した奈良高専。ロボコン大賞は徳山高専

約5時間に及ぶ競技の結果、決勝に進出したのは奈良高専と徳島高専。会場の熱い視線が注がれるなか、奈良高専がVゴールで勝利を収め、全国の頂点に立ちました。

そして、最も優れたアイデアを実現したチームに贈られる「ロボコン大賞」は、徳山高専の手に。まるで人が投げているかのような、なめらかで美しい射出を生み出す技術力が評価されました。

勝利の喜びを爆発させる者、悔しさに涙する者…。
さまざまなドラマが繰り広げられた2022年の高専ロボコン。競技にかける高専生たちの情熱と、ものづくりに真摯に向き合う姿は、私たちにたくさんの驚きと感動を与えてくれました。
ロボコンという貴重な体験を糧に、高専生の皆さんが今後さらに成長されることを期待したいと思います。

結果

優勝:奈良高専「三笠」
準優勝:大分高専「國崩し」
アイデア賞:長野高専「信州ずくだせランド」
技術賞:和歌山高専「とばーすくん」
デザイン賞:有明高専「AppRoachlng」
アイデア倒れ賞:都城高専「華て!カババッ!」

ロボコン大賞:徳山高専「双宿双飛」

特別賞:
富山高専(本郷)、大阪公大高専、熊本高専(八代)、旭川高専、
香川高専(詫間)、国際高専、大島商船高専、都城高専

出場チームに感想をお聞きしました

香川高専高松キャンパス

プロジェクト名「CONTRAIL」

「今回は特に課題が難しく、方針を立てるところから苦労しました」と、チームリーダーの森川さん。「地区大会の後、ロボットを一部改良し、装填数を増やしスピードアップを狙ったのですが思うようにいかなくて。もっと時間をかけて知恵を絞っていれば結果が違ったかもしれない」悔しさもありますが、良かった点も。「僕らのロボットの特徴は装填部分で、カートリッジ交換が1、2秒の速さでできます。そこは大会でしっかりアピールできました」。また、“凄腕スナイパー”として注目を集めた操縦担当の小川さんに感想を尋ねると「試合はめちゃめちゃ楽しかったです。次回も挑戦します」と笑顔で答えてくれました。

国際高専

プロジェクト名「美技成A-Z」

「大会ではピットメンバーとして後輩2人が加わりましたが、ロボット製作は3人でやりました。メカ・制御・ソフトの3分野それぞれ1人で担当したんです」とチームリーダーの畠中さん。なんと、プログラミングは未経験で1から勉強し、半年で完成させたというから驚きです。「ロボコン初心者ですが、緊張せずに楽しめました。一番の苦労は、僕らの練習場と試合会場の環境が違い過ぎたこと。広さも気流もまるで違うので、現場での調整が大変でした」。
本戦では惜しくも敗れてしまいましたが、少数精鋭の高度なパフォーマンスで見事「特別賞」を勝ち取りました。

大会参加者へメッセージ

画像システム事業部・田中
「末恐ろしい高専生たち」

高専生のレベルの高さに驚きました。自動化を積極的に取り入れる流れが今は当たり前になっています。Vゴールを決め続ける奈良高専など、とんでもなく難しい課題を軽くこなしてしまうとは、末恐ろしいですね(笑)。出場校の皆さんには、今回の体験を大切に、いい思い出を作ってほしいと思います。自分は高専ロボコンで誇れるような結果こそ残せませんでしたが、今の仕事にロボット製作で得た経験と知見が活かされています。製造業などものづくりの現場に携わるお客さまと、同じ目線に立って考えることができるのは大きなメリットです。また、苦楽を共にしたチームメンバーとは今も連絡を取り合い、親しくしています。そんなところもロボコンの魅力だと思います。

制御システム事業部・板橋
「私たちの頃はまるで原始レベル(笑)」

今回、注目したのは大分高専。4機構のうち3つを人間が操縦し、1つをiPhoneで射出するアイデアと、それを成立させる設計はすごいなと思います。私は学生ロボコン経験者ですが、その頃はiPhoneのカメラで補正なんてことはできませんでしたし、今と比べると非常に原始的で、松明に火をつけて石を投げるようなレベル(笑)。ただ、松明であれ、iPhoneであれ、ロボコンではどんなに高性能なツールや技術でもそれを活かせるかどうかが重要で、本当に強いチームというのは100%活かして勝ちを取る。そこだけは、今も昔も変わらないですね。そして、無茶な課題を出されても、必ず圧倒するチームが出てくるのがロボコンです。不可能の壁を乗り越えていく高専生たちを喜ばしく思います。


高専生たちのチャレンジする姿に、大きな可能性を感じました。

代表取締役 村上 慶

リンクスでは、高専ロボコン出身者が数多く活躍しています。また、新卒採用の3分の1が高専出身で、高専生との親和性の高い会社といえます。そうしたこともあり、高専生の皆さんのチャレンジを応援したいという想いで、今回、新たに高専ロボコンに特別協力いたしました。
ロボットで紙飛行機を飛ばすという競技テーマは、非常におもしろいですね。難題ではありますが、一方向を集中的に狙ったり、全方位に打ち出したり、やり方次第で高点数が取れるものなんだなと驚きました。飛ばし方も点数の取り方も、チームそれぞれ全く違いますし、高専生たちの発想や技術に無限の可能性を感じます。
日本のロボット産業は世界トップレベルといわれていますが、その一方で、ロボットの用途拡大やオートメーションのレベルアップなど課題もあります。
テクノロジープロバイダとして、ロボット産業の発展に貢献することがリンクスのミッションです。近い将来、ものづくりの現場を支えていく高専生の皆さんとともに課題に挑み、ロボット産業の可能性を広げていくことができればとても嬉しいと思います。
リンクスは、高専ロボコンをはじめ、これからもさまざまなかたちで、未来を担う高専生の皆さんの成長を応援し続けていきます。

今回、リンクスの出展ブースには、多くの高専生が訪れました。リンクス社員にさまざまな質問を投げかける熱心な姿も見受けられ、活気あふれる交流の場となりました。